◎愛というエゴで抱きしめて
鶴♀獅子♀
甘い香りの女の子。そう思っていた。
「俺が?」
そういうのは鶴丸じゃないのか。獅子王は縁側できょとんとしていた。団子片手に、彼女は長い髪を結い上げて、金色をぴかぴかと俺に見せた。
「鶴丸の方が、儚い感じする」
「おいおい、俺がかい」
「だって、いつか消えちゃいそう」
まあ、消えるのは戦いに勝利した時だけど。そう言った獅子王は我らが主を信じている。そういうところが、甘く見えるんだ。言いたいのに、言えなかった。細い指に同じように細い指を絡める。俺のほうが長くて、少しだけごつごつしていた。修行を無事に終えた獅子王の手はまろい。前よりも角が取れたのは、彼女が真に下賜されし刀だと再認識したからだ。彼女は戦う刀ではない。戦場に出たことのない、刀。美術刀にも、宝刀にも成れぬ、じっちゃんとその一族に愛されし刀。
これがどうして甘く見えないなんてことがある!
「鶴丸の修行はどうなるんだろうな」
「さあなあ」
俺さ、先に強くなっておくから。獅子王は艷やかに笑う。
「先に強くなって、鶴丸が戻ってきたら練度上げのお供をしたい」
決して、数値の上では強くないけれど、獅子王には確かな覚悟がある。
「俺は待つだけなんて嫌だからな!」
キラキラと輝くような笑顔に、俺はきゅっと絡んだ指に力を込めたのだった。
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