◎愛をあげようか


膝♀大包♀
タイトルは背中合わせの君と僕様からお借りしました。


 丸くやわらかな指先。神経質な彼女の手が、俺の額を撫でた。気がついて、目を開く。
 手が離れた。
「きみ、また無茶をしたんだろう」
 非難するような鋭い目に、たかだか熱中症だろうと視線を返した。
「次は倒れん」
「次なんてあってはならないだろう。もう少し、体に気をつけてくれ」
「少しぐらい無理をしなくては、刀をやっていけないだろうに」
「きみの少しは少しではないのだ」
 次はない。膝丸はそう繰り返した。俺は頑固物めと、目を閉じた。
「今は、少し眠る。膝丸は掃除当番だったろう」
「きみが倒れたからと免除してもらったぞ」
「なんだと?!」
「そもそも、今日の分の掃除は終わりかけていたところだったからな」
 それよりも水分を取れと、彼女が水の入ったボトルを持ち上げる。仕方なく起き上がり、受け取るとキャップを捻って中身を口にした。ひやりと、冷たい水が熱い体に染み渡る。
 飲み終わり、ボトルを戻せば膝丸が俺の額にまた手を置いた。ひやりとした手に、熱が奪われていくようだ。そういえば、膝丸は体温が低めだった。心地良さに目を細めれば、意を察したらしい膝丸がゆるりと笑った。
「俺の手で良いのなら、いくらでも触っていよう」
「何を言う。お前以外は許さないぞ」
 それは嬉しいなと、膝丸は美しく笑っていた。

06/27 17:39

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