◎喜びも悲しみもない果てで出会う


ダイディア/風車ダイゴさんと自身で切り開くディアンシーさん/ダイゴさんが弱ってます


 くるくると回る風車をきみは知ることが無く。
 手紙をしたためようと思い立ったのはついさっきだ。作業台に置いてあった石の手入れ道具を一纏めにして隅に寄せ、まっさらな紙とインクのたっぷり入ったペンを取り出す。椅子に座り、机に向かって紙にペンを走らせた。書くことは一にも二にも石のことだけれど、最後の一文だけ決めていたことがあった。
 書き上げた手紙を読み返して誤字脱字が無いことを確認するとその手紙を筒状に巻いて、細い紐で縛る。からり、扉が開いて外へと出ていたきみが僕を伺う。その姿に安心して、僕はそっと告げる。
「きみがいつか僕を看取った暁にはこの手紙を読んではくれないかな。」
 こう言って、何だと思う。手紙ではなく、これは遺書だったのだ。
 きみは顔を悲しそうに歪めて頷く。その痛々しさに手を伸ばしそうになるが、手の届く距離ではなくて苦笑してしまった。きみは僕に近寄って、僕の膝の上に花を乗せた。ささやかな野の花は僕へと与えてくれるものなのだろうか。きみは微笑んでいた。ふと、気がつく。きみは涙を零さなかったのだ、と。
 だってきみはいつだって置いていかれるものなのだから。
(愛することの怖さをきみは知っているのだ。)
 きみは風車ではなく、喜びも悲しみも背負った果てで僕と出会ったのだと。


01/22 01:30
- ナノ -