◎やさしいせかいでいきるの


やさしいせかいでいきるの/マツミナ/少し不思議


 どこかぼんやりとしていたようだ。

 丸い目が半月のようになって、ゆっくとり瞬きを繰り返すミナキ君に毛布を掛けた。やがて微睡みへと沈む彼に、僕は心底羨ましくなったのだ。何故なのか、分からないけれど。でも、心の中で確かに僕は言っていたのだ。
「あしたまでのれぽーとがあるのにげーむしちゃって。」
 手のひらほどのかせっとを羨ましく眺めたなんて。

 ふっと意識が戻る気がした。傍らのゲンガーが心配そうに覗き込んでくれていて、僕は心配ないよとその頭を撫でてあげた。カレンダーの日付を見れば、どうやら今日はミナキ君が立ち寄る予定の日らしい。彼によって書かれた赤い丸印が、やけに愛おしいように見えた。
(さっきまで、あんなに不貞腐れていたのになあ。)
 そう思ってから首を傾げる。さっきまでとは何だったか。僕はただ居間でぼんやりとしていただけなのに。
(まあ、いいか。)
 ミナキ君が予定通りに来るかなんて分からないけれど、少しぐらい掃除をして出迎えてもいいのかもしれない。まずは換気だろうと、戸を開いた。


01/17 03:30
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