◎きみは母


ダイゴ×ディアンシー/きみは母/ディアンシーは喋りませんが女の子です。


 初めて見た時、この世の中にこれほど美しいものが存在するのかと思った。そんなありふれた言葉で片付けるには惜しい程に、僕にとっては衝撃的だったのだけれど。
 あの子が連れてきた彼女はディアンシーという幻のポケモンだった。僕がメレシーを連れているのを見て、あの子はそれならと彼女を僕の自宅に連れてきてくれた。
 それじゃあと言ってあの子が僕の家を出て行こうとするので慌てれば、一週間ほど預かっていてほしいとのことだった。あの子曰く、彼女も僕に興味があるのだとか。
 ならば、まず彼女と打ち解ける為に何をすればいいのかと考える。そこでやはり考えたのは僕のメレシーを出してみることだった。僕のポケモン達全員と会わせたかったけれど、一度に沢山は大変かもしれないし、あの子曰く彼女はしばらく僕に預かられてくれるのだから。時間はたっぷりある。
 メレシーと会った彼女は嬉しそうに挨拶を交わし、何やら会話をする。その光景に微笑ましさと羨ましさを感じていれば、メレシーが僕を紹介してくれたらしい。紹介ならあの子もしていたが、やはりポケモン同士だとまた変わるのだろう。彼女は僕をしっかりと見て嬉しそうにお辞儀をした。だから僕も改めて自己紹介をした。
 しばらくすると、彼女が僕のコレクションを気にしていることに気がついた。ならばと一つのケースを取り出す。
「これはダイヤモンド。きみが作り出すというダイヤモンドはピンク色をしているピンクダイヤモンドだけれど、これは無色透明なものだよ。」
 ピンクダイヤモンドも何処かにあったのだけどとその場から移動しようとすると彼女に呼び止められる。振り向けばそっと差し出したその両手が煌き、キラリと一際強く光った。反射で閉じていた目を開けばそこにあったのは彼女が作り出したピンクダイヤモンド。彼女はそれを手に取り、笑顔で僕に差し出した。恐る恐る受け取れば、ほのかな温もりを宿したような、母の腹の中にあるような生命力を感じた。
(きみにとってこれは子だということなのか。)
 彼女は優しく笑った。


12/17 03:39
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