◎ノスタルジックを夢見て


マツミナ/ノスタルジックを夢見て


 マツバの目はいつもどこか伏せ目がちで、太陽の光を目一杯反射していることが少ないように思える。マツバは太陽と共にあるようなホウオウを見たいといいながら、太陽からは一歩下がった位置に居続けている。それは悪いことじゃないが、何故だろうと不思議に思った。それは私がスイクンを求めるあまりに水のある場所を転々として水のその魅力にも取り憑かれているからだろうけれど。
「ミナキ君は池が好きだよね。」
 二人で庭の手入れをしている時にそう言われて、そうだろうかと首を傾げる。確かに今は池の掃除をしていたが、確かに丁寧に掃除をしているが、そんな風に言うほどだろうか。そんな凝り性の気がある私だがマツバだってその筈だ。現に今のマツバは庭の紅葉を丁寧に剪定(せんてい)している。
「だって目の色が違うよ。」
 にこりと笑うマツバに思わず瞬きをする。確かに私は水辺が好きだから、否定を繰り返すことは無いのだ。けれど何と言うか気になるのだ。そう。マツバの顔がどこか羨ましそうに見えた。
 私は急いで立ち上がり、水道につながるホースを掴んで蛇口を捻った。途端に流れる水を感じながらホースの口を狭める。荒いミストのようになったそれの角度を調整すれば出来上がりだ。
「虹だぜ。」
 笑えばマツバは苦笑した。ポケモン達が水で遊びだすを止めるために水を止めればふとゲンガーが袖を引っ張った。視線の先の空を見上げて驚く。
 大きな虹がかかっていた。

 しばらく眺めてからマツバを見ればまだ空を見上げていた。空を映すその目は輝いているようで、懐かしんでいるようでもあった。そうかと思う。マツバはもう少年の心を忘れかけているのだ、と。
 それでも良いのだろう。私だって大人なのだ。少年の心はいつか小さくなっていく。でも決して無くならないのだから嘆くことは無いのだ。忘れかけていくことだってあっても、完全に忘れ去ることは無い。
「マツバ、手入れが終わったら茶を飲もう。」
 そしていつかの懐かしい話をしよう。


11/26 04:10
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