◎冬の空を見上げる


マツミナ/冬の空を見上げる


 空が澄んでいる。冬の太陽は優しく大地を照らしていた。隣にミナキ君が居たらと考えて、笑ってしまいそうになる。それは自嘲とかじゃなくて、こちらに駆けて来るきみが見えたから。
 僕の名前を呼んで駆けて来るミナキ君はマフラーを身に付けていて、その色は濁った緑色。その色が何と言うのか、きみは知っている。
 近くまでやってきたミナキ君は笑って手を差し出して来る。その手に手を重ねればポカポカと温かい体温が伝わってきた。マツバは低体温だなと笑うきみに、きみがいつも温かいから良いのだと告げれば嬉しそうに笑ってくれた。
 並んで歩き、すっかり落ち葉が片付いた歩道を歩く。お酒を買って熱燗なんてどうだと言うきみに、そりゃいいねと笑う。僕らは酒豪じゃなく、嗜む程度だけど、嗜むぐらいは飲むのだ。
 並んで歩けば空気が耳を切るように痛む。寒い日だと思っていればミナキ君は早く用事を済ませて帰ろうかと笑ってくれた。
「夕飯ができるまでコタツでみかんでも食べてるといいさ。」
 笑顔のきみに、笑って手を握り返した。


11/23 00:53
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