◎曇天の朝※ゲーム寄り


今朝は曇天だった。珍しく自宅に帰って、出勤のために家を出た。その時に見た空は曇っていたのだ。灰色の濃い雲が広がる空に、雨が降るかもしれないとぼんやり思った。だとしたら挑戦者は比較的少なくなるだろう。最も、自分のところまで辿り着けるのはいつだってほんの一握りだけど。

「クダリ、待ちなさい」
「んー、なあにノボリ」
「財布忘れてますよ」

ノボリはそう言うと灰色の財布を突き出した。ボクは笑って助かったありがとうと言った。財布の色にたいした意味なんてないのに、その灰色に既視感を覚えて、すぐにこれは雲の色だと思った。雨を含んだ雲の色。

「じゃあ行きましょう」
「うん」

ボクはノボリと並んで歩く。空は変わらず曇天だ。今日もボクらはバトルサブウェイに泊まり込みで、傘は必要がない。必要がないものはいらない。

「そんなことはありませんよ」
「そう?」
「必要の無いものは心の余裕のために必要になる、必要の無いものはありません」
「そっか。ノボリは大人だね」
「あなたも大人でしょう」

ノボリは呆れた顔をしていた。ボクは少しだけ、楽しかった。





曇天の朝
(早く出勤してしまいましょう)
(今日はバトルできるかな?)


01/29 23:10
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