◎今日も『好き』を言いそびれた


!似非コガネ弁!

やっほー生きとるかーなんて言いながら彼の頬をべちべち叩く。彼は煩わしそうに顔を振って瞼を動かした。穏やかな春の陽気の中で昼寝をする彼はとても綺麗で、開かれた目が日光で煌めくのをウチはちらりと見てから立ち上がる。何時までも見ていたいけれど、ウチは見つめていられるようなキャラではない。ホラ、早よせんと挑戦者来てるんやろ、と言いながら笑う。ウチは笑えているだろうか。その辛さに口に出してしまいそうになる。でも、言わない。否、言えない。
彼は返事をして起き上がり、立ち上がる。その動作は心無し洗練されているような気がして、嗚呼、末期やなと心の中で苦笑する。

「呼びに来てくれてありがとう」
「ええよーちょっと用事があっただけやし」

にこにこ、ウチは笑う。彼は離れてゆく。振り返らず、ジムへと歩く。その背中に今日も言えなかったそれを繰り返し、心の中で呟いた。

(だいすき)





今日も『好き』を言いそびれた
甘くせつない20題
TOY


01/20 01:31
- ナノ -