◎嫉妬を昇華させて


彼は優しい。ボルダリングをするからなのか、周囲を常に良く見ている彼は気遣いを忘れない。そしてその気遣いはとても優しく、私はそのたびに嬉しく思うと同時に、少しだけ嫉妬する。彼は私にだけ優しい人ではないのだ。

それは美徳だと人は言うだろう。それでも私は彼に優しくされるであろう見ず知らずの誰かに嫉妬してしまう。心が狭いと思われるのは当然だろうし、私自身もそう思う。そしてそれを彼に悟られるのは嫌だった。優しい彼は許容する。そして自分を責めてしまうかもしれない。私に嫉妬させてしまったのは自分の所為だと。
そんなことは全く無いのに、彼ならばそう思ってしまう。いや、これは想像でしかないのだが。

「ズミさん」
「どうしましたか」
「特に用はないのですが…」

相談なら乗りますよ、と言う彼に私は嬉しくなると同時に、また嫉妬を覚えそうになる。だから私は大人だというのに大人気なく行動するのだった。





嫉妬を昇華させて
(愛してますよ、ザクロ)
(?私も、です)


11/12 02:30
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