◎勝利


チリオモ


「総大将って寝たん?」
「睡眠はきちんととってますよ」
「ならええけど。ほら、今日の書類な。サインいるもんやから」
「分かりました」
 目を通しながらさらさらとサインを書いていくオモダカに、チリはじいと見つめる。
「なあ、やっぱり寝とらんやろ」
「おや、どうしてですか?」
「目の下のクマ、メイクで隠しきれとらんよ」
「ふむ……」
 オモダカはやや考える。
「本当に寝てはいるんです。ただ、少し夢見が悪くて」
「夢見ィ?」
「いつまでも、私がトップチャンピオンで居続ける夢を見るんです」
 それはパルデアの停滞に過ぎない。より強いパルデアのためには、オモダカは超えられなければならない。
「子供みたいな夢でしょう」
 でも、本当に恐ろしいのだ。オモダカは自分すらも、強いパルデアのビジョンに必要ないとする。
「子供とは思わんよ」
 だから、チリは言う。チリにはオモダカが必要だ。
「でも、トップを降りたら、チリちゃんも連れてってな」
 それだけ。
 オモダカは目を丸くする。意外そうな顔に、チリは、次の書類の束を運んだのだった。


03/08 19:24
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