◎イタズラ好きなあの子


チリオモ


「チリ、助けてください」
「またキラーメなん?」
「髪に絡まっているようでして」
「ほら向こう向いて、あー、いたいた」
 出ておいでなとチリが手を貸すと、キラーメはふらふらと救出された。
 オモダカは、元気なのはいいですが程々にお願いしますねと、笑っていた。チリははあと息を吐く。
「総大将は甘すぎとちゃう?」
「まだ子どもですから」
「そうやけど」
 不満そうなチリに、オモダカはくすくすと笑う。
「チリも甘やかしてほしいですか?」
「うわ、無理」
「ふふ。ですが、羨ましいのでしょう?」
 そんな顔をしてますよ。そう言われて、チリはこれだから総大将はと眉を寄せてため息を飲み込んだ。

 今日もまた、イタズラ好きのキラーメがふよふよと浮いている。また絡まったらあかんよ。チリが声をかけると、きらきらと鳴いていた。分かっているのか、いないのか、分からない。
「チリ、こちらにキラーメがいませんか」
「居るで。ほらそこ」
「ああ、居ましたか。キラーメ、機嫌はどうですか?」
「そっぽ向いとるで」
「キラーメ、分かりました。明日は試合の視察に連れて行きます」
「おお、喜んどる」
「良かったです」
 しかし試合で機嫌を治すあたり、やはりトップチャンピオンのポケモンである。チリは流石やなと呆れた。
「それではチリ、しばらくキラーメを頼めますか」
「ええで。面会の予定やろ」
「そうです。では、キラーメ、チリと一緒にいてくださいね」
 キラーメは嬉しそうに笑っていた。


03/04 09:57
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