◎変異体


チリオモ


 温室の中。オモダカは丁寧に草花を眺め、流れる噴水に向き合う。
 しゃら、ららん。それは金属の音。コレクレーの変異体が、音を鳴らし続ける。
「総大将、ここに居たん?」
「チリですが。外の様子はどうですか?」
「パルデアはつつがなく回っとるで」
「やはり、私がいなくとも、パルデアは輝き続けるでしょう」
「そんなわけないやん」
 皆がトップチャンピオンを待っている。チリの言葉に、オモダカは小首を傾げた。
「トップチャンピオンは単なる役割であり、象徴でしかなかった。でしたら、私ではなくとも良いのでは?」
「それでも、パルデアを強くしたいって本気で思ってたんは、総大将ぐらいや」
「そうでしょうか」
 どうにも、そう、は思えない。オモダカの特性をオモダカが一番分かっていないのだと、チリは言う。だが、オモダカには本当に分からないのだ。
 強いパルデアには、強い星々がいる。ただ、それだけ。
「総大将、そろそろ温室から出る時やで」
「ええ、もう少しでしょう」
 このしゃら、ららん。変異体のコレクレーはこの温室でしか生きていけない。オモダカと、同じだった。


03/01 20:10
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