◎わたし好みのあなた
チリオモ
人が思うより、オモダカは脆くて、チリが思うより、オモダカは強い。
人間性をどこかへ置いてきた化け物のようで、ごく普通に人を愛することができるのだ。
恋や愛に溺れることはない。だが、恋も愛もその身に刻んでいる。
パルデアの地を慈しんでいる。強くあれと願っている。チリは、それが眩しい。
いつか、オモダカが疲れ果てた時が来るのだろうか。
チリは首を傾げる。それだけは無いだろう。自分のキャパをよく分かっているのが、オモダカだ。
「チリ、おはようございます」
「おはようさん」
ガスパチョを飲んでいると、オモダカがさっさと起きてくる。最近はいつもより仕事が立て込んでいたので、今日は秘書たちが何とかスケジュールを開けた休暇だ。たまにはゆっくり寝とけばいいのに。チリはコップに注いだガスパチョを差し出しながら言う。オモダカはリズムが崩れると体に良く無いですからと笑っていた。
「チリのガスパチョは美味しいですね」
「オリーブオイルとトマトをたっぷりと、やで」
「助かります」
そういえば、と、キラーメがふわふわと浮くのを避けて言った。
「スーツを全てクリーニングに出したので、久々に私服ですね」
「お! チリちゃんが選んだろか」
「頼みます」
よっしゃとチリは嬉しくなって笑う。
「チリちゃん好みの総大将にしたるからな!」
「お手柔らかにお願いしますね」
オモダカはくすくすと笑っていた。
02/20 19:34