◎ウワサ


チリオモ


「オモダカさんって彼氏いるんですか?」
「はい?」
 チリが呆れ顔で言った。
「部下の子らが話しとってなあ」
「まあ、恋バナですか?」
「満場一致で、トップは仕事が恋人、やったからな」
「よくご存知で」
「こら」
 不満そうなチリに、オモダカはくすくすと笑う。
「私のプライベートなんて、チリが知っているだけでいいのですよ」
「チリちゃんとしては、彼女ですけど、って言いたかったわあ」
「それはそれは、やめてくださいね?」
「ひどっ」
 むすっとするチリに、オモダカは楽しそうだ。
「本当に、私のプライベートは無いようなものでしょう? チリと休暇を過ごすことも殆どありませんし」
「まあ、毎日職場で顔合わせとるし、挨拶もできるし」
「では良いのでは?」
「……あかん」
「おや、食いつきますね」
「やって、チリちゃんかて、総大将の彼女やし」
 だって、と、チリは言う。
「そら、仕事に影響あったら嫌やけど、でもなあ」
「落ち着いてください。コーヒーでも淹れましょうか?」
「総大将の淹れたコーヒーは不味いからいらん」
「私にも自覚はあります」
「なあ、いつでもええからデートしよ」
「いいですが、島でも貸し切りますか?」
「そうやない。うう」
「いつになく感情的ですね」
「今すぐ抱いてもええんやで」
「それは恐ろしいですね」
 真顔になったオモダカに、チリは呆れた。
「ああもう、今度ディナー行こ、それでええよ」
「ありがとうございます。行ってみたい店があるのですが、そこでよろしいですか?」
「そうしたって」
「確認もしないのに?」
「総大将の趣味なら大丈夫やろ」
 仕事に戻るチリに、オモダカは笑いかける。
「今日も私のチリが優秀で助かります」
「あー、はいはい」
 これだからトップチャンピオン様は。
 チリが息を吐くと、オモダカはまた笑っていた。


02/11 20:08
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