◎亡者


チリオモ


 亡者が語る。
 亡霊となったトレーナーを何人も見てきた。オモダカが手折ってきた彼らを、チリは息を吐いて視認する。確かに、面接に受かる素質はある。四天王を倒すセンスもある。だが、トップチャンピオンの試験に合格するには、足りない。
 あわれだこと。チリはコツコツと歩く。オモダカはリーグの屋上にいた。
「総大将、」
「チリ、彼を外まで送ってくださいますか」
「ええよ」
 目の前が真っ暗になった亡者を回収する。チリが先導し、リーグの外へ。そのままタクシーに近くの街まで送らせた。
 チリが亡者にならなかったのは、それだけの才があったのだろう。オモダカの部下になる素質があったのだろう。チリには、亡者の心が分からない。一度負けた程度で何になる。チリは食らいついたのだ。
 バトルが強いだけでは何にもならない。尋常ならざる精神がなければならない。チャンピオンクラスのトレーナーとはそういうものだ。
 オモダカが事務室へと戻っていた。あれこれと職員に指示を出すのを、チリは眺める。すぐに、彼女はチリに気がつく。
「おかえりなさい、チリ」
 早速ですがと、指示された書類を受け取りつつ、オモダカに疵がないことを確認する。
 彼女の手折ってきた才能を、チリはよく知っている。
「よろしくお願いしますね」
「任せとき」
 チリは頼もしいですね。オモダカの言葉に、わざとらしいことだと、チリは笑って見せた。


02/05 19:20
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