◎雨のカーテン・プライベート


チリオモ


 雨道。
 ざあざあと雨が降る。チリはちらりと前方のオモダカを見た。雨ですね、と彼女は焦ることなく窓の外を見ている。
「雨を、空が泣いていると、言う人がいるそうですね」
 詩的な表現である。ただの気象に、生理現象を掛け合わせるのは言い得て妙だ。
 どちらも、自分の意のままにはならない。
「だれかがあまごいでも指示したのかもしれないのに」
「あれは精々バトルフィールドぐらいやん」
「そうですね。それでも、みずタイプが真価を発揮することに代わりはありません」
 実利主義とでも言おうか。オモダカはたまにこういうところがある。まるで勉学を軽視するようで、何よりも詳しいように思うから、不思議だ。
 何でも知ってるかのような錯覚を、対峙する人に持たせる。
「総大将、この書類運ぶで」
「お願いします。職員のイッシュ地方への出張についてもまとめておいてください」
「了解。制度はきちんと作らんとな」
 ルールを厳守せよ。それはポケモンバトルと同じことだ。オモダカは満足そうに微笑んでいる。窓の外。雨を背負い、パルデア(だいち)を背負い、輝いている。
 誰よりも、今を煌めく毒の花(キラフロル)が似合う人だ。
「チリ、晴れたら一戦しませんか」
 私、少しだけ体を動かしたくて。そんな言葉に、仕事があるから遠慮するわと笑った。


01/23 20:02
- ナノ -