◎星の子


チリオモ


 宇宙を胎(はら)に収めるヒトだ。
 チリは思う。自分は普通の学校を出ている。否、荒れている学校ではあった。ただ、経歴としては平凡であると自認している。
 チリを見つけたのはオモダカで、オモダカにこうべを垂れたのは、チリの意思だ。
 この人にならついて行ってもいい。まるで許しを自身に与えたように、そう思えたあの瞬間を、チリは忘れない。
 だって、オモダカは別次元の人だ。深い愛情を持つ人だ。普通ではない、尋常ではない、そんな精神の人だ。
 たまにキラーメが髪で遊んでるとか、そんな風に抜けているところもあるくせに、それも含めてチリの中で輝く。
 星を抱いている。宇宙を胎(はら)に飼っている。そう思うのは、オモダカが散々、良いトレーナーたちをパルデアの星だと語るからだ。単純で、単調な、平凡な例え話だ。想像力なんてひとつもない。
 でも、たまに思う。あの人は本当に腹に何かを飼っているんじゃあないか。
 それはおんなだからだ。生命の神秘、その胎で人が生まれる。
 オモダカが飼う宇宙はどんなものだろう。チリといたら叶わぬそれを、彼女はどう思うのだろう。
 チリとオモダカに未来はないのか?
「ありますよ」
 キョトンとしながら、オモダカは言う。
「私たちは、人間ですからね」
 方法なんて、幾らでも。それこそが、人間なのですから、と。
 生き神のような、宇宙を胎(はら)に抱くヒトは、そう笑っていた。


01/21 05:04
- ナノ -