◎あまおと


チリオモ/掌編


 あまおとがする。
 さあさあと雨が降る。チリは外を見ている。オモダカは執務室で書類と向き合っている。
「チリ、サインを書きましたよ」
「おう、ありがとうございます」
「雨は止みそうですか」
「しばらく降るんとちゃいます?」
 リーグの窓の外、空の雨雲は分厚い。きっとこれから本降りになる。
「明日は晴れるそうです」
 オモダカが言う。彼女が言うなら、本当だろうと思えた。チリは、オモダカを信用している。
「雨になると傷が痛むっていいますやん」
「はい」
「総大将もそういうことあるんです?」
 ちら、と見る。オモダカは苦笑した。
「あまり、ありませんね」
 やっぱり。チリはにっこりと笑う。
「総大将はそうでなくっちゃなあ」
 有象無象からの痛みを覚えておく必要はないし、それらはつゆ払いたるチリの仕事が活かされる時だ。
 必要のない痛みを、オモダカは知る必要がない。それは、オモダカのためではない。チリの自己満足だ。
「明日は晴れます」
 そんな気がしてきました。オモダカが笑うので、チリはそうやろうなと改めて思った。


01/11 15:59
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