◎小春日和
キバネズ
長い時間がありました。それを切り落として、貴方に差し上げるのです。
タチフサグマがうとうとしている。トレーナーであるネズもまた、こっくりこくりと船を漕いでいた。
「眠いのか?」
キバナに言われて、はいとネズは素直に言った。キバナは知らない仲ではない。むしろ、恋人なんていう仲である。なんで恋人になったのか、ネズにもとんと分からない。
ちゃんとベッドで寝ろよなとキバナがネズを抱き上げる。タチフサグマはカラマネロがねんりきで持ち上げた。
寝室にタチフサグマと寝かせられて、毛布をかけられる。春とはいえ、まだ冷えるからな。キバナは笑っているらしかった。目を閉じたネズには分からない。
「しっかり眠って、元気になってくれよ」
起きたらごはんの用意を整えておくから。キバナのそんな甘やかな声と、額への口付けに、キザなやつとネズは思いつつも睡魔に負けて眠ったのだった。
「いや何で」
目覚めてからリビングに向かえば、昼飯の用意を整えたキバナがいた。ポケモンたちにご飯を渡しながら、おはようと笑う男に何でとネズはジト目になる。
「おれはこどもですか」
「え? なんで?」
「甘やかすなってんですよ」
「えー、ごめんな?」
「反省が感じられねえんですが」
「ご飯食べようぜ」
「はい」
キッシュのプレートに、また凝ったものをとネズはため息をついた。嫌いだった? そう問われれば、ネズはそうですねえと告げる。
「大好きですよ、このやろう」
「ありがとな!」
さて、昼ごはんだ。マリィなら夕飯時に帰ってくるってさ。キバナは楽しそうに言っていた。
02/11 21:39