◎詩人


キバネズ


 きんと冷えた夜。ふと、隣の温もりに、涙が出そうになる。一人の夜とはまた違う、孤独がそこにある。これを歌にしなければ。そんな風に思うのは、きっと職業病なのだろう。
「ネズ?」
 どうしたんだ。キバナが目を開く。起こしてしまった。ネズは決まり悪くて、キバナの胸に額を擦り寄せた。
「二人だからこその孤独があるんですよ」
 おまえには無用な知識でしょうけど。ネズがぼやけば、分かるよとキバナは微笑んだ。
「オレだって、寂しい日はある」
「おまえが?」
「そう、オレさまが」
 だったら、とネズはキバナを見上げた。ベッドの中、夜の闇の中。愛するポケモンたちは、ボールの中。ネズはそっとキバナの頬をなぞる。
「おまえも詩人に成れますよ」
「そうかもな」
 でも、ひとまず今日は寝てしまおう。キバナはそうしてネズを抱きしめ、目を閉じる。ネズはくつりと笑ってから、おまえは建設的ですねえと目を閉じたのだった。


12/23 15:25
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