◎嘘つきな私を愛してよ。


キバネズ
タイトルはCock Ro:bin様からお借りしました。


 自衛のために嘘をつく。ネズが嫌いなことだ。ネズはいつだってリアリストで、真っ直ぐで、捻くれていて、残酷なまでに前を向く。
「窒息しそう」
 ネズの髪をさらさらと触っていたキバナが言う。何を今更。ネズは嘲笑った。
「今更どうってことねえですよ」
「それは、そうなんだろうけどさ」
 世界は正しさばかりではない。自然も、人間も、理不尽が多いこの世で、ネズが長く生きられる気がしなかった。
 キバナは思う。ネズがもう少し生きやすい世界になります様に、と。
「ロマンチスト」
「知ってる」
「わがままなんですよ」
 好きな人を生かしたい。それがどれだけ傲慢なのか。ネズは言う。おまえは知っているのに目を背けるのだ。
「そうだよ、知ってる」
「なら、分かるでしょうに」
「でも、やっぱり、生きててほしい」
 どうかオレより長生きしてくれよ。縋るような声音は、こんな微睡みのような朝だからだろうか。温かいばかりで、世界が優しいかのように錯覚させる。そんな朝が来たからだろうか。だとしたら、世界はなんて、キバナとネズに厳しいのだろうか。
「もう少し、柔らかくなるといいな」
 その感性が柔らかくなりますように。キバナの願いに、ロマンチスト極まれりとネズは目を伏せたのだった。


12/19 20:25
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