◎生来@ネズ+ホップ


ネズ+ホップ


 ネズさん。ホップの明るい声がした。
「たとえば、剣にも盾にも選ばれなかったら」
 王ってなんだろう。ホップは気軽に言っている。ああそうだ。ネズは分かっている。
「おまえは必ず選ばれますよ」
「なんで?」
「どうしてだと思います?」
 それは、とホップは考える。
「アニキのおとうと、だから」
 はあ、とネズは息を吐く。
「そんなのは関係ありません」
「ええ、でも……」
「おまえが、おまえである限り、おまえは王ですよ」
 分かりませんか、小さな王(キング)。ネズは高らかに告げる。
「おまえは旅を経て王に選ばれたとお思いでしょうが、おまえ自体は旅立つ前から完成している」
「ええ?」
「ダンデは王ではある。でも、英雄に選ばれるには、止められなかった。大人過ぎたんです」
「ええっと」
「英雄はおまえの無垢を選んだ。おまえの、純な心を好んだ。ねえ、おれは、おまえ以上に純なひとは知りませんよ」
 ホップはぽかんとしていた。ネズは黙る。
 しばらくの静寂。その後に、ホップは恐る恐る語った。
「じゃあ、もっと大人だったら選ばれなかったのか?」
「そうかもしれませんねえ」
 でも、高々ifの話だ。
「おまえは生来の王なんですよ」
 そうして悩むところとまた、王たる器だろうと。ネズの謎掛けのような言葉に、ホップは難しいんだぞと呟いたのだった。


10/22 17:34
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