◎しゃぼん玉


グラハウ


 ふわふわ、ぱちん。
 これは、シャボン玉液だよ。そんな風に言われて渡された小さな容器を、ハウは持て余す。村の子ども達に渡せば楽しく遊んでくれそうだが、貰い物を渡してもいいのだろうか。うーんと、考えて、ハウは立ち上がった。自分で少し遊んでみよう。それから、余ったものを村の子に渡そう。
 家の窓から飛び出して、ライチュウをボールから出す。そのまま、行くよと掛け声をかけて、走り出した。

 行き先は海岸沿いだ。遠くの船を見ながら、ハウは小さな容器を持つ。そういえば輪っかが必要だったと思い出し、少し考えてから、その場に生えていた太めの植物の茎を手折った。中が空洞なのを確認して、シャボン玉液を片側につける。ライチュウに見ててと呟いてから、ふうっと吹いた。ぽわ、とシャボン玉が膨らむ。そのまま離れてくれないかなと軽く振ると、ぱちんと弾けた。

 そうして何度か試したが、コツが掴めそうにない。ハウは眉を下げた。
「うまくいかないなー」
 こういうの、チャンピオンは得意そう。ハウは考える。リーリエは、何だかんだでうまくできそう。グラジオは、どうだろうか。
「むしろ、シャボン玉で遊んだことあるのかなー」
 うーんと考えて、分からないやと口を結ぶ。自分と出会う前のグラジオのことは、自分は何一つ分からない。それでいいと、ハウは考えた。気になるけど、全て知ったら勿体無い。少しずつ知るのが、きっと一番だ。笑みを浮かべたハウを、ライチュウが覗き込む。ふふと笑って、もう一度、シャボン玉に挑戦した。

 ふうーっと膨らむシャボン玉。ぱちんと弾けて、跡形もありません。ちょっと残念で、勿体無いけれど、嫌な気持ちではなかった。

 今度はグラジオと遊んでみようか。答えの出なかった思考に、答えを与えても良いのかもしれない。ハウは容器を握りしめて、ゆっくりと蓋を閉めたのだった。


02/02 22:51
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