◎優しさの尺度


グラハウ


 誰にでも優しい人は、特別な人を作れないだけなんだって。
「それって、少し寂しいよねー」
「だからハウは優しくないといいたいのか」
「うーん?」
「ハウには特別な人がいるだろう」
「わあ、すごい自信」
 だってそれ、グラジオのことでしょう。そう言えば。当たり前だとグラジオは笑った。
「特別ではないと言われたら、ショックで寝込むな」
「わー!次期代表が寝込むなんてダメだよ!?」
「冗談だ」
「目が本気じゃんかー!」
 もうとおれはため息を吐く。結局なんの話だったか。そうだ、優しい人は特別な人を作れないという、話。

「おれ、やさしくなりたいのに、なれないのかなー」
「充分優しいじゃないか」
「ほんとうにー?」
「もちろん」
 こうしてエーテル財団で保護しているポケモンたちと遊んでくれているじゃないかと。グラジオの言葉に、そうかなあとおれはウソッキーの手を触って健康状態を見る。青々とした手は健康そうだ。
「グラジオは、」
「どうした」
「グラジオは優しいよね」
 ずっとずっと、見ただけじゃわからないような優しさを持っている。目標かなあ。おれはウソッキーを撫でる手を止めて、ウソッキーに抱きついた。冷たい体、ああウソッキーだなと安心した。
「ハウ?」
「おれ、グラジオのそういうところ、羨ましいかもーなんてねー」
 へへと笑えば、グラジオは全くと不機嫌そうに眉を寄せたのだった。


03/18 01:07
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