◎隣に並び立つこと


イリミヅ/誕生日の友人に捧げます。おめでとう!
作業用BGM→午後の待ち合わせ(Hello Sleepwalkers)


 貴女の隣に並び立つことを夢見た。

 彼女の記念の祭りの日。夕暮れに行われた宴で、そっと人の輪から離れた隙をうかがって、彼女へと近寄った。
「チャンピオン、おめでとうございます」
 声をかければ、ありがとうと彼女は微笑んだ。これからは防衛戦を頑張らなきゃねと胸を張っていた。
「イリマさんのキャプテン業はどうですか?」
「ヌシポケモンを鍛え直してます。今度はもっと強いヌシポケモンで挑戦者を迎えないとと思いまして」
「えー、充分強かったのに!」
「そうですか?」
 とても強かったですよと彼女は笑った。
「初めての試練で、初めてのヌシポケモンで。本当に大変だったから……」
「そう言っていただけるとキャプテン冥利につきますね」
「あー、あんまり信じてないですね! 本当なのに!」
 私がここまで強くなれたのはイリマさんのお陰でもあるんですからねと言った。どういうことですかと聞けば、イリマさんが鍛えたヌシポケモンがいたからと明るく笑った。
「ヌシポケモンがあんなに強かったから、もっと強くなろうって思ったんです。試練に挑むたびに、強く、強くって。その積み重ねのきっかけがイリマさんのヌシポケモンだったの」
 本当だよと彼女は笑いながら言った。その顔がとびきり明るくて、楽しそうで、自然と笑みがこぼれた。
「では、これからも挑戦者の壁になれるように頑張りますね」
「あんまり強すぎると挑戦者が途絶えてしまいますよ!」
「塩梅はまた貴女に聞くということで」
「なるほど。じゃあ、いつでも相談に乗りますからね!」
 約束ですよと小指を差し出されて、何だろうと首を傾げれば、指切りだよと彼女は言った。
「小指を出して、そう、折って。ゆーびきりげんまん……」
「物騒な歌ですね」
「でも、約束を守ろうって思うでしょう?」
 貴女との約束を破るつもりはありませんよと言えば、イリマさんってたまにそういう事言うと、何故かそっぽを向かれてしまったのだった。

 夕暮れの中、貴女の隣に並び立つことを夢見た。それはきっと夢で終わる夢想の世界だけど、現実では遠い先にいた貴女が隣へと駆け寄ってきてくれたのだった。


11/09 17:13
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