◎サナトリウムの夢のまた夢@捏造


ヒビコト/主人公ヒビキさんと幼馴染コトネさん/捏造幼少期の話です
!捏造ばかりです!


 今日も少年は家に行く。
 まだ幼い少年はその家に着くとドアをノックしてから声をかけた。名前を名乗ればドアはすぐに開かれた。ドアを開いたのは女性だった。
 いつもありがとう、コトネはいつもの部屋よ。そう優しく言われ少年は頷いてからお邪魔しますと元気に言いながら家の中に入ったのだった。
 少年はすぐに目的の部屋に向かうとベッドへと駆け寄った。そのベッドには少女が寝ており、音で少年に気がつくと起き上がった。
「ヒビキ! 今日は早かったね。」
「うん。見せたいものがあったから。」
 見せたいものとは何かと少女であるコトネは問いかけた。少年、ヒビキはにししと笑ってカバンから何かを取り出した。それは一枚の絵だった。
「あ、これ知ってる! チコリータと、ワニノコと……。」
「ヒノアラシ! 研究所の外で散歩してたから絵を描いたんだ! 」
 すごいねとコトネはキラキラとした瞳で絵を見つめた。拙いながらも一生懸命に描いたのだろう、その絵を持つヒビキは誇らしげだった。
「あとね、これ。」
「ワッ、マリルの絵だ! 」
「水辺で泳いでたんだよ。」
 もう一枚の絵、水色のマリルが描かれたそれをコトネはさらに目を輝かせて見つめる。ヒビキはその様子に満足し、二枚の絵を差し出した。コトネは瞬きをし、不思議そうにする。
「あげる! コトネのために描いたから。」
 コトネは差し出された絵を受け取り、いいのかと聞いた。ヒビキは勿論だと笑っていた。
「だから今度は外に行こう。」
 ヒビキは語る。絶対に大丈夫だからと。
「たまには動かないときんにくが弱っちゃうんだって。」
「でもお父さんがまだ……。」
「ちょっとぐらいなら大丈夫だって! お医者さんが言ってたしさ。」
 コトネは顔を伏せて考え、しばらくしてから頷いて顔を上げた。そんな様子をヒビキは優しい目で見守っていた。
 コトネは語る。
「明日のお昼、外に出たい。お父さんはお仕事だから、大丈夫。」
 じゃあ決まりだとヒビキは嬉しそうに笑い、コトネもつられるようにして微笑んだのだった。



3gramme.


01/19 00:44
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