◎愛するのはただ一人!
ギマシキ、カトシキ前提ギマカト要素あり/短いので移動しただけです
触れるだけのキスを数回。カトレアの顔に降り注ぐ。しかしカトレアの表情はまったく変わらない。私はつまらなくなって、抱きしめていた彼女を開放した。彼女はその場から動かないでいた。私との距離はだった数センチ。彼女は口をゆっくりと開いた。
「アナタはとても寂しいひとね」
彼女はとても賢い女だ。でも、そうじゃなくてもきっと私の気持ちなんてすぐに分かるのだろう。分からないのはきっと本人だけだ。
「…そうだね」
私は怖いのだ。シキミに否定されるのが。だから何も言わない。行動に移さない。
「ばかみたいね」
カトレアはそう言ってベッドに腰掛けた。
「さっさと言えばいいのよ。そしてきっぱりと断られなさい」
「酷いなあ」
カトレアは最高の理解者であり、恋敵だ。彼女もまた、シキミを愛している。それは私がシキミを愛しているからこそ分かったこと。きっとそうでなければ気がつかない程、彼女はシキミに寄せる思いを誰も気がつけなかっただろう。それ程カトレアは隠すのが上手だった。嗚呼、私とは正反対だ。
「アタクシ、あなたが嫌いよ」
「そうかい?」
「でも好きよ。だって私の理解者だもの」
「それは光栄」
カトレアもまた私と同じ気持ちらしい。とても、とても不毛だ。
「…私はカトレアを愛せれば良かったのかな」
ぼそりと私が呟く。それに反応したカトレアは眠そうに言う。
「アタクシが愛するのは、シキミだけよ」
そして彼女はボスンッとベッドに横たわった。
愛するのはただ一人!
(そうだね、私はカトレアを愛せない)
(何を当たり前のことを言っているのかしら?)
12/12 22:57