◎絆創膏


短いので移動しただけです。

「ベル大丈夫?」
「うん、平気だよぉ」
 ベルは立ち上がって膝の砂を払った。いつもはロングスカートのベルは今日に限ってミニスカートを着ていた。淡い黄色地にリボンを付けたテディベアがプリントされたTシャツに赤のチェックのベスト、同じく赤のチェックのミニスカート。トウコがくれたシルバーのペンダントに黄色のパンプス、髪は低い位地で二つ結びにして桜色シュシュを二つ。気合が入っているのは当然で、今日はデートなのだから。
(そう思ってるのは私だけだけどぉ)
 トウコとベルは恋人同士ではない。だから二人っきりで出掛けるコレも、デートではないのだ。
 トウコはベルの膝に血が滲み始めるのを見て、近くにあった水道にベルを連れて行った。
「ベル、足出して。」
「うん。」
 黄色のパンプスと白いレースの靴下を脱いで白い足を蛇口の下に出す。トウコはそれを見ると栓をひねった。とたんに溢れ出す水で細かな砂と砂利と血が流れ落ちる。
「トウコありがとう。もう大丈夫だよぉ」
「まだダメ。絆創膏貼ってあげる。」
 水を止めて、トウコはタオルを出して余分な水をベルの足から拭き取った。
(近い…)
「これでよし。じゃあ絆創膏貼るから」
 せっかくオシャレしたのに、絆創膏貼ったら台無しかな。と、ベルは思う。

ぺたり。

「はい、出来た」
「あ、ありがとう。あれ?この絆創膏…」
 絆創膏は可愛らしい桜柄だった。今日のベルの桜色のシュシュとお揃いだ。
「可愛い!ありがとうトウコ!」
「どういたしまして。たまたまあったからさー」
(どうしよう、嬉しい)
 これならオシャレが台無しにならないだろう。そんな偶然がベルにはとても嬉しかった。
「じゃあ行こうよ」
「うん!」
 トウコから手が差し出される。ベルはそれを握って立ち、離そうとするとぎゅっと握り締められた。
「トウコ?」
「誰かさんがまた転ばないように手を繋いであげるの」
 にこっと花が咲くような笑顔に、ベルは何も言えなくなって、そのまま歩き出すしか無かった。暖かな日差しのせいか、トウコの手もベルの手も熱かった。



絆創膏
(ねえ、ベルは知らないだろうけど)
(絆創膏もタオルも毎回転ぶベルの為に用意してるんだよ)
(桜の絆創膏がたまたまあったなんで嘘。)
(ベルに似合うかどうか凄く悩んで決めたんだから)


12/12 22:53
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