◎シック、クラシック、露天商


マツミナ


 きらきら。
 裸電球の光が反射して光る。美しいそれはりんご飴だ。近頃はリンゴ以外も使われていたりするが、私はどうにもりんご飴が特別好きだった。だから祭りの屋台ではいつもりんご飴を買って食べる。上手に食べることは難しいが、こちとら十数年は食べてきているのだから経験値をふんだんに活用すればいい。マツバがきみは上手に食べるねと呆れていたことは記憶に新しいものだ。とは言っても、もう一年前の話だけれど。
 マツバと合流すれば、むこうは焼きそばとお好み焼きを二つずつ買っていて、私はりんご飴をもうひとつとわたあめを買っていた。ああやっぱり、お互いに考えることは似ていたわけだ。
 花火をどこで見ようと歩いていれば、高く澄んだ音がした。その方を見れば、なんと風鈴が売っていた。毎年出されているわけではないその屋台に近寄れば、マツバもついて来てくれた。
 風鈴とは懐かしいな、なんて見ていれば、今年も出したのにとマツバが笑うので、それはそれだと早口で返した。店主と相談しながら藍色の模様が入った風鈴を購入し、木箱を受け取る。店主にお礼を言い、ビニール袋に入ったそれを片手に店から離れて花火がよく見える場所を探す。毎年のことなので候補はいくつかあって、その中でどこが今年は一番見やすいかと話しながら進む。
 雑踏が遠くなり、高台となった場所。今年はここだと設置されている椅子に座り、購入した食べ物を食べた。やはり家で作るものとは違うなと会話をしていれば、花火の時間はもうすぐだった。
 夜空で咲く花火を、手持ちのポケモン達と見る。花火が終わった時、マツバは言う。
「懐かしいね。」
「そうか?」
「だってまるで小さい頃みたいだ。」
 ポケモンと子供二人。ああ、似ている。今では色々なことが上手になったけれど、変わってないことはたくさんあった。
「まるでタイムスリップしたみたい、か。」
「そうかも。」
 ねえとマツバが微笑む。楽しいと哀愁が混ざっていた。
「来年も一緒に来ようね。」
 その言葉が、あの頃の繰り返しだなんて手に取るように分かるもので。
「もちろんだぜ。」
 ポケモン達が楽しそうに笑っていた。


05/12 09:56
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