◎夕飯はふたりで作る


夕飯はふたりで作る/マツミナ/テーマ:祈りとリアリティ/テーマが行方不明感



 指の先から髪の先まで、全てがキミを構成する全てであり、それ以上をキミは望まなかった。でも、そんなキミがただ一つだけ手繰り寄せたものがあって、それがスイクンという北風であったのだ。
 日差しの柔らかな春の日中。貪るように昼寝に勤しむミナキ君の頬を撫でる。ゲンガーがそっと部屋から出て行き、代わりにやって来たマルマインはそっとこちらを見るとすぐに皆の元へと戻る。昼間の心地よい日差しの中、庭の全てを使ってポケモン達はかくれんぼをしていた。ポケモン同士だからこそ、ゴーストタイプだから有利などとはならないようで皆で楽しそうに遊んでいる。そんな中で、僕とミナキ君は縁側に居てミナキ君は柱にもたれかかるように寝こけてしまったのだ。布団に運ばなくてはとは思うものの、この暖かくて心地の良い縁側から遠ざけるはためらわれ、とりあえず床に寝転がるように体勢を変えさせた。全く起きる気配のないミナキ君に、疲れていたのだなと苦笑し、こうなる前に休んでほしいと思った。スイクンを追い求める彼が休むことを後回しにするのは、手に取るように分かるものだ。だって僕も虹に憧憬を抱いているのだから。
 それにしても暖かく気持ちの良い日である。ポケモンたちの笑い声も心地よく、自分まで眠くなってしまいそうだった。しかしここで寝たら二人して夕方に起きることになるだろう。それは少々避けたい事態だった。でも、それは決断するには理由として甘くて、ぼんやりと意識が微睡んでいく。
(午睡を貪るのも悪くないのかもしれない。)
 そう考えてしまえば意識は落ちていく。せめてもの抵抗でミナキ君の隣に寝転がり、その手を握って目を閉じた。手袋をしていないその手は温かくて、その温もりにまた眠気が増えたのだった。


03/01 03:33
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