◎永久の約束


ダイディア/ディアンシー視点/ディアンシーさんの一人称はわたくし


 その傷は決して隠避するものではないと、貴方は言ったのです。
 わたくしの体には傷が付きません。ダイヤモンドとはどんな鉱物よりも固いからだと貴方は言ってくださいました。それがどこかむず痒いように、心が温かくなったのです。けれど、わたくしは傷が付かない万物の神様ではないのです。体がどんなに丈夫でも、王国から外へ出てポケモンバトルをしてみれば、いとも容易くこの体は傷付き、心もまた傷付くのです。心の傷は決して負けたから付くのではなく、己の不甲斐なさに傷付くのです。それは一種の自傷行為でしょうか。そうではありません、誰にだってあるものなのです。だって貴方がそう教えてくださったのです。わたくしに外を教え導いたあの子だって大切なことを教えてくださいましたが、それよりもっと貴方が多くを教えてくださいました。傷付くことの許容と、何かを極める為の決断と、何よりも愛情の尊さと惨めさです。わたくしは恋物語すら触れたことが無く、籠の中の鳥ポケモンのように育てられました。生まれながらに長命の王であるわたくしには繁殖能力はないので、それはもう当たり前のことでしょう。恋物語よりもわたくしは王国をより良くする為に多くを学ばねばならなかったのです。しかしわたくし決してその過去を後悔などしていません。だって貴方が教えてくださったのです。愛情の愚かさと愛情の温もりと愛情の苦しみを、他の誰でもない貴方が教えてくださったのですから。
(ダイゴさま。)
 わたくしは貴方と永遠に共にいることは出来ません。でもほど近いいつかの日に王国に帰ったら、毎夜の夢を見る前に貴方のことを思い出しましょう。
 それがわたくしにできる最大限の、貴方の為の永久の約束なのです。


01/24 02:25
- ナノ -