◎望まれる者


ダイディア/ダイゴさんは王国からディアンシーさんを借りています


 王国は王なくては在りえない。
 きみの穏やかな笑い声と、僕のメレシーのはしゃぐ声が聞こえる。エアームドが空を飛び、メタグロスが静かに佇んでいた。場所はトクサネの浜辺。海水浴をする観光客が僅かにいるそこで僕らは昼下がりを過ごしていた。昼ご飯も済ませたこの時間は穏やかに過ごすことに最も適しているように思える。僕の足を乗り越えて遊ぶコドラをそのままに、きみを見る。初夏の太陽を受けて輝くその体はまさに最上級の宝石だろう。世界で最も美しいポケモンと噂されるだけはある輝きに、僕は静かに目を逸らした。その輝きも確かに魅力だが、きみの魅力がそれだけではないことを僕はもっと確かにしておきたかったのだ。見た目だけではない何か。そう、その心だ。
 きみの心はとても優しくて、それでいて強い。それは柔軟な心をしているということで、なのに誰よりも頑固な性をしている。優しさはきっときみの性格で、柔軟なのは長く生きたが故に身につけた処世術だろう。そして頑固なのは、言うまでもない。
(きみは生まれながらに王なのだから。)
 信念を貫かねばならない。信念の為に犠牲も負わねばならない。きみは王国の為に全てを捧げるのだ。それを頑固という言葉で片付けるのはあまりにも簡単かもしれないが、その単語が何より物語る。王とは信念に頑固でなければならない。
(それが王国民が望む王の姿だからだ。)
 哀れだろうか。否、それだけはありえない。きみはそれしか無いのだから。哀れになど思ってはならない。
(生きることを否定してはならない。)
 潮風を頬で感じながら、きみと僕のポケモン達が遊ぶのを眺めた。
 きみと過ごす期限はもうすぐだ。


01/23 03:25
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