何となく思いついたネタ
一次創作です。
名前にまつわる物語



「あなた、名前は?」
「そんなものはない」
「あら、そうなの?ならば名前をつけてあげる!」
「それが何になる」
「そうね、何にもならないかもしれない。でもね、名前ってとっても大切なの」
「ふうん」
「そうね、あなたは、アイラ、アイラスパヒーブ」
「あっそ」
「意味は猫よ!かわいいでしょう!」
「ありふれたものだな」
「ええ、ここでは猫はありふれてる。でもね、きっとこの名前は、あなたの運命を変えるわ」
「僕の?」
「ええ、ただ生きるだけのあなたに、きっと、良いことがある。辛いこともある。でもね、忘れないで」
「なにを」
「あなたはアイラスパヒーブ、アイラ、わたしたちの愛する生き物のひとつなのよ」

これは総てに名前がある世界。
魔法も、剣も、光も闇も、全てがあるこの世。
そんな世の中を猫が闊歩する話。

「ねえ、貴方は何をしているの?」
「別に何も。あんた誰」
「私はサフィ。研究者よ。ねえ、随分とボロ切れみたいだけれど」
「別に」
「うーん、これは魔法が必要ね"水よ"」
「いらない」
「いいから大人しくして!よし、汚れが落ちたわね。"服よ"」
「ああ、これ、しゃつ?」
「スラックスもつけておいたわ。よーし、行く宛はあるの?」
「無い」
「じゃあ一緒に来て!手が足りないの」
「僕にしてほしいことがあるの」
「簡単なことしか頼まないから大丈夫。さあ、行きましょう!」
「あんた、少し、あの子と似てる」
「へ?」
「やっぱ似てない」
「え、どこ行くの?!」
「研究者なんだろ。仕事をくれるならやるよ」
「ありがとう!衣食住は保証するわ!」
「あんた、安請け合いしすぎじゃ、」
「私はサフィって呼んでね」
「……サフィ」
「良し!貴方の名前を教えてくれる?」
「アイラ」
「アイラね!良い名前だわ!コックリ語で海でしょう?」
「……」
「私、海が好きなの!研究室は山の中だけど、一番高い階層にあって、海が見えるのよ」
「あっそ」
「よし、行きましょう!仲間にも紹介しなきゃ!」
「好きにするといいよ。あんたは雇い主だからな」
「サフィよ」
「サフィ」
「宜しい!」
2023/01/03 22時01分

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