◎大包平が狐に会う話@大包平


大包平中心


 あなたしか居られぬのです。
 そんな声がした。大包平が飛び起きると、そこは小さな座敷牢だった。すぐに本体たる刀と打撃で扉を破り、座敷牢から駆け出す。
 面妖なことだ。きっと狐の仕業だろう。大包平には断定する判断材料があった。だって、眠る直前、鳴狐のお供が危険を知らせて騒いでいたのだ。

 大包平は走る。途中のカラクリなどこの大包平にはちっとも障害にはならない。坂を抜け、廊下を抜け、橋を渡り、狐の顔をした人形の通りを抜ける。
 やがて稲荷系の神社が現れると、知らんなと大包平は刀を構えた。
「俺を捕らえたいなど、笑止。せめて最後は俺が斬り伏せてやろう!」
 でも、お狐様は大包平さまがよろしいのです。
「知ったことか!」
 大包平が大きく刀を振るうと、ギィェアと音がした。あのお供の狐が危険だといったのだ。きっとこの稲荷系の神社はまやかしなのだ。
 あやかしを斬った大包平は、ふんと興味をなくしたように刀を収める。
「俺を集めようなど、思わんことだな」
 お前には荷が重すぎる。そう伝えて、大包平は異界から出ていったのだった。



08/13 21:46
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