◎君のくれる針くらい飲み干してやるって


鶴獅子
タイトルは水魚様からお借りしました。


 白い指が指す先に、赤。
 マチ針を丁寧に取り除けば、あっという間に小袋が完成した。お守り袋かいと言われて、そうだよと返す。彼の刀はそりゃ驚きだと笑う。
「きみにお守り袋を持つような信心は無かったと思っていたんだが」
「付喪神がこうして食って寝て戦してるんだぜ。カミサマぐらいいるだろ」
「そうかねえ」
 白い彼は俺の手の中にあったお守り袋を持ち上げた。赤いそれは、白い彼によく似合う。
「やるよ」
 そう言えば、彼は、えと、小さな声を漏らした。
「きみ、長いことこれにかかりきりだったじゃないか。そんな物を俺にくれるのかい?」
「おう。最初から鶴丸に渡すために作ってたわけだし」
 当然の帰結。そう笑えば、そりゃないぜと彼は眉を下げた。
「俺はこれに足る贈り物を思いつかないのに」
「無事帰って来るだけでいいんだって」
「そりゃあ、ないぜ」
 酷い話だ。そう語る鶴丸の頬は緩んでいる。嬉しいんだ。そう感じて、俺はクスクスと笑った。
「じゃあさ、鶴丸は俺の足首に繋ぐ赤い紐でも見繕ってくれるか?」
 嫌になるほど物質的。そう言いつつも、鶴丸は任せろと胸を張ったのだった。



07/12 18:35
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