◎お昼寝


小狐丸×お供の狐


 すやすやと狐が寝ていた。いつも煩いまでにお喋りな狐が静かなのが珍しいのでそっとその隣に座ってみる。さらにその背中を撫でてみれば、気持ち良さそうで穏やかな顔をする気がして撫で続けた。半刻ほど過ぎた時、狐がむずがるように動いたかと思うとゆっくりと瞼を上げた。そしてがばりと起き上がる。
「こ、小狐丸様?!どうなさいましたか!」
「気持ち良さそうに寝ているものだから撫でてみたのじゃが、おぬしは案外良い毛並みをしていることが分かった。」
「それはわたくしめには勿体無きお言葉!ありがとうございます!ところで鳴狐はどこに……。」
「ふむ。私がここに来た時には既に姿が見えなかったが。」
「なんと!鳴狐はどこへ行ったのでしょう。ならば、小狐丸様、わたくしはこれでっあ?!」
 ひょいと持ち上げれば四本の足をばたばたと動かして放してくだされと喚く。それは煩いが、どうにも心地よい調子で話すものだと感心した。胸に寄せ腕の中に収めて抱き上げれば狐は疑問符を浮かべて慌てていた。
「ここここ小狐丸様どうなさいましたか!降ろしてくだされ!わたくしは鳴狐のところへ行かねばなりませぬ!」
「そうか。ならば私と共に行けば良い。」
「なんと!小狐丸様は鳴狐の居場所をご存知なのですね!」
「いや知らぬ。」
「なんとおおおお!」
 狐はそう叫ぶとばたばたと暴れたが、びくともしない腕に諦めてへたりと力を抜いた。少し疲れたのだろう、また寝てもいいと言えばそんなことは出来ませんと言っていた。その声の張りが弱くなっているので、どうかしたかと問いかければ鳴狐と一緒にいないと落ち着かないのですと自嘲するように言うので、それはと教えてやる。
「相棒なのじゃろう。それなら隣にいないと元気がなくなるのは仕方ない。」
「そういうものでございましょうか。」
「そうだとも。」
 しかし、と私は言う。
「私と共にいても元気でいたらいいのだが。」
 狐は心底不思議そうに、わたくしの相棒は鳴狐だけですよと言ったのだった。



09/04 14:44
- ナノ -