◎桜が降る夜


みかしし


 桜が降る夜。
 朧月夜、春の日の月見。ふわりふわりと酩酊感を味わいながら、俺は機嫌よく三日月の隣に座っていた。今日の月は綺麗だな、そう笑えば、そうだなと三日月も笑う。なんて良い夜だろう。俺はクスクスと笑って、遠くで鳴く鵺を思いながら、盃の酒を見た。朱塗りの盃は、今日が祝い事のある日だと教えてくれる。長く探していた毛利藤四郎がようやく見つかり、顕現にも成功したのだ。一期一振を始めとした藤四郎は大いに喜び、捜索部隊もようやく荷が下りたと安堵した。そんな日の夜、つまり今日は宴会が開かれた。その宴会からこそりと抜け出して、二人で酒を飲んでいるのは、少しだけ心苦しいが、長く捜索部隊に入っていたのだからこれぐらいの我儘を許してほしい。
 うつらうつらとそんなことを考えていると、三日月がそういえばと笑う。
「いつの間にか桜が咲いたな」
「ん、ああ、満開だな」
「獅子王が捜索部隊に駆り出されている間に散ってしまわぬかと心配だったが、無事花見酒を楽しめて良かった」
「本当にな!」
 今こうして、宵の桜と月を愛でながら三日月と酒を飲める。うまく言い表せられないが、とても素晴らしいことだ。
「明日はゆっくり起きていいそうだぞ」
「休暇でもくれるのかよ」
「そうらしいな」
 じゃあもう少し夜更かししても平気だなと笑えば、三日月は疲れているだろうにと俺を気遣ってくれた。珍しいなと三日月を見れば、彼はそれだけ獅子王が大切なのだと、優しく笑っていたのだった。



03/18 19:21
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