◎わたあめ


じじしし


 主がなにやら機械を出してきた。片手にはザラメもあり、何をするのかと集められた短刀に混じって見つめれば、主はわたあめを作ると宣言した。
 主の手でふわふわと白いわたあめが作られていく。目を輝かせる鶴丸さんの隣で同じように目を輝かせてしまう。だってそれはもう不思議な機械だし、なによりそれを食べた五虎退が輝く笑顔で美味しいというものだから気になる。とても気になる。そんな俺たちにも主は一つずつわたあめをくれたのだった。

 さて、この手の中のわたあめをどこで食べようかと考える。外で食べると太陽の熱で溶けると鶴丸さんが驚きに興奮しながら言うし、居間には短刀の皆で溢れてる。どうせならゆっくり食べたいのだが、一人で食べるのも寂しい。ならば、とあの部屋に向かった。
「三日月のじーさん!」
「おお、獅子王か。」
 お早う、と今日初めて顔を合わせるものだからそんな挨拶をして部屋にお邪魔して隣に座った。手の中のわたあめを不思議そうに見るので名前とどんなものかを教えて、口に含む。ふわりとしながら口の中でするりと溶けるそれに美味しいと言えば、そうかそうかと三日月は嬉しそうに言った。そんなに嬉しそうにするのは何故かと聞けば獅子王が嬉しそうだからだと言う。でもどうせならとわたあめを一口分手に取り、差し出す。手で触ろうとするものだから、べたつくから口にと手を寄せれば三日月は素直に口を開いた。その口にわたあめを入れれば三日月はその月のある目をきらきらと輝かせた。
「甘いな。」
「だろ!すっげえ甘いけど口に入れると面白くてさ。」
 どんどん食べれるなと笑えば、三日月も微笑む。その美しさに綺麗だなと思っていれば、三日月はその美しい形の唇で言う。
「もうひとくち。」
「お、いいぜ。」
 ほら、とまた一口分つまんで差し出せば三日月はまた口にそれを迎え入れる。俺も一口わたあめを食べて、と二人で食べ進めればあっという間にわたあめは芯にしていた割り箸だけになってしまう。食べ終わっちゃったなとちょっと勿体無く思いながら言えば、ならばと三日月は微笑んだ。
「また作ればいい。」
「ま、そうだな。」
 そう返して立ち上がろうとすれば三日月が俺の腕に手を掛ける。何かと思って三日月を見れば、彼は笑顔で告げた。
「その時は俺もその場に居合わせたいものだ。」
 言われて、なんだそんなことと俺は笑った。
「当然だな!」
 次は一緒だ。



08/29 15:57
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