◎くるしいぐらいに愛してる


蛍愛


 なあ蛍。そう呼べば蛍丸は振り返って、なあに国俊って笑うんだ。

 同じ来派、保護者の明石もいるのに蛍丸は二人部屋がいいといつも言う。そうすればずっと二人きりなのに何ていうから、部屋にこもりきりじゃないんだからと返せば、蛍丸はムスッとしてヘソを曲げてしまう。
 本当はね、さみしいんだよ。蛍丸は言った。
「短刀達でよく遊んでる」
「蛍だって一緒だろ」
「俺ばっか出陣してる」
「オレだって夜戦に出てる」
 蛍丸はくしゃりと泣き顔になって、オレに抱きついた。ほんとはね、本当はねと言う。
「もっと一緒にいたいよ」
 なんで大太刀なんだろ。なんて言うから、蛍は立派な大太刀で、大事な戦力じゃないかって笑ってみせた。

 本当はオレだって蛍丸と一緒に真昼間で戦う第一部隊に入りたい。でも戦力に大きな差があるから入れてもらえない。修行に行けば話は変わるけど、蛍丸の様子を見ているとオレは当分修行には行けそうになかった。嘘。蛍丸の様子だけじゃない。オレだって蛍と離れられないのだ。
(共依存ってやつなのかなあ)
 ただ、大好きなだけなのに、少しでも離れると思うと呼吸が出来ないぐらいに苦しくなってしまう。蛍、蛍、置いていかないでくれよ。
(本当は出陣なんてしないでほしい)
 オレの知らない海の底が、忌々しくて仕方ないんだ。



11/12 22:38
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