◎口では言わないけど、きっと


いち愛/うたかた/タイトルはシュガーロマンス様からお借りしました


 泡沫、うたかたのとき。
 一期が笑っている。俺を見て、手を差し伸べて、頬を染めて、微笑んでいる。まるで恋する乙女みたいだと口から零せば、そうかなとまた笑った。
「きみが私を頼ってくれることが嬉しくてね」
 頼ってなんかないと言えば、手を重ねてくれるじゃないかと笑う。俺が重ねた手を彼は彼の手でゆるりと撫でた。自分より大きな、大人の男の手に撫でられて、思わず目をとろりと細めてしまう。刀の本性が出てきてしまう、そんなことを思っていると一期は穏やかに微笑みを浮かべていた。
「可愛いね」
 そうして屈んで、俺の手の甲に口付けを落とすから、そんなことで喜ぶのは若い女子だろうにと呆れてしまったのだった。
(それでも、ちょっとだけ嬉しかったのは、内緒の話)



11/08 19:20
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