◎星を探して旅に出よう


髭獅子/タイトルはシングルリアリスト様からお借りしました


 ゆめのなか。
 目を開くと真っ暗な場所にいた。そこはただただ暗くて、自分の手すら見えなかった。それでも、自分が戦装束を身に纏っていることは分かり、少しだけ安堵した。動きやすいことは良いことだ、けれど、本体の刀も無ければ鵺も居ないらしい。これは困ったと俺はその場で立ち尽くした。
 きっとこれが夢だろうとは分かっていたから、俺は黙ってその場に座り込んだ。足を伸ばして、手をついて、ゆらゆら体を揺らした。
 そうして半刻程経った頃。やあと声が聞こえた。誰だろうと、いつの間にか俯いていた顔を上げれば、そこにはふわりと輝く髭切がいた。
 彼もまた戦装束を身に纏っているが、刀は見当たらなかった。彼がそっと手を伸ばすから、その手に手を重ねると俺の体もふうわりと光を放った。驚いて瞬きをすれば、髭切はにこにこと楽しそうに笑って、さあ行こうと言った。どこに行くんだよと問いかければ、そうだねえと髭切は歌うように言った。
「夜空の星を探しに行くのはどうかな? 」
 きっと楽しいよと真っ暗な中で言うから、そうだとしたら、その星ってのは光り輝く髭切のことじゃないのかなと思った。そんなこと、言えやしないけど。



11/07 23:01
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