◎実福/odaの皆さんに相談する福ちゃんの話


実福/odaの皆さんに相談する福ちゃんの話/掌編


 福島が、実休と呼ぶ声が好きだ。甘やかな響きがして、実休は嬉しくなる。福島と、呼ぶと、なんだよとすぐに返事をしてくれるのもいい。気安くて、家族だと思える。
 実休と福島は同じ光忠の刀だ。
「すきだよ、福島」
 湧き上がる愛しさのままに声をかけると、福島はびくりと震えてぽかんとしていた。

「ちょっと織田の皆さん!」
「おや、どうされました?」
「よお福島さん」
「あ、宗三くんと薬研くんだけだ」
「俺もいるよー」
「不動くんー!」
 ねえ、聞いてよと福島が言う。
「実休がおかしくなった!」

 曰く口説かれるらしい。
「四六時中! 出会ったら好き好きって、誰がいてもお構いなしなんだよ!」
「好きにさせればいいのでは?」
「だめでしょ?! 俺たち兄弟なんだよ?!」
「刀だろ、福島さん」
「うう、でも」
「福島さんは兄弟にこだわるもんね」
 うーんと不動は言う。
「でも、それ俺たちにもどうにもできないよ」
「なんで?!」
「だって、あの刀が俺たちの進言で止まると思う?」
 だれよりも魔王に近くて、だれよりも記憶が曖昧で。だれよりも、今を生きる刀。
「好かれるぐらい、受け止めなよ」
 ふわりと笑った不動に、福島はへなへなと座り込む。だって、だってと言う。
「俺は、ふつうに、兄弟としてやっていけると思ったのに」
「裏切られた心地ですか?」
「そんなかんじ……」
「まあいいんじゃないですか。関係性はひとつではありませんよ」
 だから前を向きなさい、と。
「実休の気持ちにも向き合いなさい」
「実休の気持ち?」
「告白されては逃げられるってのはキツイだろうなあ」
「うっ」
「いくら実休さんでも気に病むかも」
「ううっ」
 ね、と織田の皆さんに背中を押されて、福島はトボトボと部屋に戻った。
 実休と福島は相部屋だ。今なら薬草園にいるだろうと戸を引くと、実休が待っていた。
「ふくしま」
「お、おう」
「ちょっと僕の癒しになってね」
 ぎゅうと抱きしめられて、心臓に似た器官がばくばくと動悸がする。やだ、悟られたくない。そう思うのに、実休は嬉しそうだ。
「ふくしま、僕のこと好きでしょ」
「っあ、」
 だから、逃げちゃだめ。
 そのまま唇を奪われて、部屋の戸が閉められた。



03/12 00:53
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