◎軟膏


燭福


「福島さん、はいこれ」
「光忠、俺はお兄ちゃんだよ、なんだいこれは」
「あなたも光忠でしょう。軟膏だよ」
 贈り物にいいかなって。燭台切が笑うと、福島はキョトンとした。
「軟膏は嬉しいけど、贈り物をもらうほどのことってあったかな」
「別に何でもないよ。ただ渡したくなっただけ」
「ふうん」
 福島は軟膏をよく見る。美しい漆の器に入った軟膏は、確かに贈り物向きだろう。だけど、何だか引っかかる。むむと唸ると、燭台切は微笑んだ。
「腕に塗るといいよ」
「……あ、」
 火傷の痕。燭台切は僕も使ってる店のものなんだと微笑む。福島はとくんと胸が高鳴った。福島を思いやり、渡された漆塗りの軟膏。嬉しくないわけがない。
「ありがとう、光忠」
 大切に使うよ。そう笑うと、燭台切はたっぷり使うといいよと嬉しそうにした。



02/27 16:56
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