◎あまいあまい


実福


 福島の肌は柔らかいと、実休は思う。どこもかしこも柔らかくて、甘くて、いい匂いがする。こら、と福島が実休の額を軽く叩く。むう、と実休は福島の指に指を絡めた。
「なに?」
「福島は美味しそうだよね」
「食べるなよ」
「食べちゃだめなの?」
「共食いなんて趣味じゃないだろ」
「そうだけど」
 でも、人の形をしたものたちなら、食らうことは出来るだろう。そう伝えたいのに、福島はこらこらと止めた。
「兄弟だろ」
「僕らは刀だよ」
「それでも兄弟なんだから」
「でも、僕は、」
 福島がとっても美味しそうでかなわない。そううっとりすると、福島は全くもうと息を吐いた。ああ、その呼吸も、おいしそうだ。



02/26 21:24
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