◎雪
実福
雪だ。
「福島、さむい」
「雪が降ってるんだよ。ほら、見てみろよ」
「寒いの、やだ」
「はいはい」
同じ布団から出たがらない実休に、福島は彼の頭を撫でて布団にきちんとは戻った。
朝餉まではまだ時間がある。今日ぐらいはゆっくりしてもいいだろう。出陣や遠征の予定はなかったし、庭仕事はこれでは難しい。福島の花の管理は午後からだって出来る。だから、今はこの甘えん坊な恋人を甘やかそう。
「雪が降るなんてきいてないよ……」
「実休は昨日まで遠征してたからなあ。冬の景趣に変えるって言ってたんだ」
「しらない……庭は平気かな」
「多分大丈夫だよ。審神者はそれぐらい対処してるさ」
「ならいいや……福島はあったかいね」
「まあ人を模した肉の器だから、体温はあるよな」
「ねえ、福島、」
「朝だからダメ」
「むう」
分かったよ。実休はそう言って、ぎゅうぎゅうと福島を抱きしめた。ふっと首筋に息がかかる。
「朝餉、終わったら、一緒に庭に来て」
「いいよ」
少しだけなら庭の手伝いができる。そう笑えば、実休はふわりと雰囲気を軽くしたのだった。
02/22 16:29