◎色


うぐしし/テーマ:目の中の宇宙


 俺の目は鋼の色をしているようだ。
 綺麗だね、そう言われて俺はそうかなと疑問を覚える。
「獅子王さんの目はとっても綺麗だよ。」
「んー、自分じゃ見れないからなあ。でもありがとな乱。」
 どういたしましてと花のように笑った短刀はそれじゃあと出陣しに向かった。俺はそれを見送ってから、手に持った竹箒を駆使して落ち葉掃除を再開した。
 俺の目は綺麗だと大体の奴が言う。ある時、三日月は俺の目についてこう言った。
『俺たちの色だからだ。』
 その目の鋼色は刀の身の色だから、親しみと慈しみを覚えるのはしょうがないんだって。

 落ち葉掃除をあらかた終えて竹箒を仕舞いに向かう。いつもの場所に立てかけるとひゅうと吹いた秋の風が身に沁みた。昼間は太陽の光があるといえど、風はどうしたって冷たい。この体になって初めての冬が近づいている気がした。
 屋敷の中に入ると、すぐに鶯丸に出会う。寒かっただろうと微笑み、俺の耳を触った。赤くなっていると楽しそうに笑う。寒いと鼻先や耳が赤くなるのはこの体になって初めて分かったことだったなと思った。指先が赤くなることは知っていたけれど。
「そういえば大包平の耳も赤くなっていたな。」
「そうなのか? 」
「やはり天下五剣ということなのだろう。」
 大包平は気にしすぎだがなと苦笑した鶯丸に、俺は三日月を思い出した。天下五剣、高い神格を持つ刀。三日月もどこか不思議な雰囲気があるから、この体を持つ前に大包平が寒さについて知っていても何だか不思議ではないなと感じた。
 そうだな、まあ、来るといい。そう言って鶯丸は俺の手を引いた。どこに行くのかと聞けば、台所で茶をもらおうと言われた。
「温かい飲み物で体を温めれば、その耳も元の淡雪色に戻るはずさ。」
 楽しそうにそんなことを言うから、雪のような肌なのは鶯丸の方だろうと呆れてしまったのだった。



01/28 16:50
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