◎ふるーつ大福


実福+燭福


 戦こそ、刀の本分である。だとしても、愛すべきものはある。花であれ、植物であれ、料理であれ。形は違えど、何もかもが愛おしいものだ。
「福島さん、ここにいたの?」
「あ、光忠。審神者の執務室の花の手入れをしたんだ」
「そっか。いい匂いがするね」
「花の匂いかな。オニユリがいいって審神者が頼んでたから、」
「万屋街で手に入れたんだね」
「そう。大変だったんだよ。で、実休は?」
「庭にいたから声をかけたよ。おやつにしよう」
「それはいいな。すぐに部屋に戻るよ」
「うん。待ってるね」
 さらりと燭台切は福島の唇を掠め取ると、去っていく。福島は人目ぐらい気にしなさいよと慌てた。

 光忠部屋では実休が薬草茶を淹れていた。爽やかな香りが心地いい。
「やあ、おかえり。こっちにおいで」
「ただいま、ええと、こっち?」
「ほら、ここにね」
 実休の隣に座ると、首筋に実休の顔が近づいた。
「甘い匂いがするね」
「それ、光忠にも言われたよ」
「オニユリ?」
「正解」
 ぺろりと首筋を舐められて、こらと福島は実休の頭を撫でた。
 素直に離れた実休は薬草茶の入った湯呑みを並べる。やがて燭台切がおやつの大福を手にやってきた。
「フルーツ大福だよ」
「ふるーつ大福?」
「桃と蜜柑だよ。缶詰が余っててね」
「へえ、いいね」
「美味しいの?」
「食べてみればいいよ」
「実休は嫌いじゃないと思う」
「そう?」
 やんわりと大福を持ち上げて、かぶりつく。じゅわ、と甘味が広がった。
「美味しいよ」
「ん、おいしい。燭台切は流石だね」
「良かった」
 そうして、燭台切も大福を齧ったのだった。



02/04 14:17
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