◎とある日のこと


実福+燭福


 三振りの朝は早い。それぞれが自分の趣味などのためにせっせと起床し、本丸内に散らばる。
 福島は今日は花の管理がある。本丸中に飾っている花たちを、バケツやハサミを手に点検していく。時折、他の刀とすれ違えば挨拶をした。

 朝餉の時間になると、作業を一旦止めて、食堂へ向かう。日本号や実休といった知り合いと食べる時もあるが、今日は一振りだ。もごもごと食べて、食器を返す。そしてまた、花の管理に向かう。

 あれこれしていれば出陣や演練の予定が急に入ることもある。呼ばれればすぐに審神者の元に駆けつけるのだ。刀として当然である。

 かくして、急な出陣に対応し、夕飯を食べて、風呂に入り、光忠兄弟部屋に帰るのだ。
「福島、大丈夫?」
「ちょっと疲れたかな」
「二人ともお疲れ様。甘い物でも食べる?」
「僕がハーブティーを淹れるよ」
「二人とも疲れてるだろうに」
「まあね」
「ハーブティー、少し甘いものにしようか」
 燭台切が羊羹を出してきて、実休がハーブティーを淹れる。福島は、その辺りのことはできないからなあと受け取った。
「俺も誰かに振る舞えたらいいのだけど」
「花については誰かのためばかりでしょう?」
「そうだよ。福島は頑張ってるよ、えらいね」
「うう、なんか違う」
「そう?」
 実休のキョトンとした顔に、燭台切はははと笑う。福島はもうと息を吐いた。
「光忠は明日から異去に出陣だっけ?」
「まあね。厨当番はしばらくないかな」
「大変だねえ」
「気をつけてね。怪我とか、しないように」
「うん。ありがとう」
 愛おしいものを見る目に、福島がふいと目を逸らすと、実休がくすくすと笑った。
「かわいいね」
「そんな事はないだろ……」
「福島さんは可愛いよ」
「お兄ちゃんだろお」
 さあ、明日も早い。歯磨き等をして寝てしまおう。三振りはそれぞれが寝る支度を終えると、電気を消したのだった。



01/25 21:36
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