◎茶請けと恋
膝大包
ゆったりとした時が流れる。本丸は軍事の最前線なのに、どこか穏やかな時が流れている。
「何をしているんだ」
「ああ、大包平か。兄者に茶を淹れている。一緒に飲むか」
「頼む。俺は茶請けを用意する」
大包平がテキパキと何やら食材の計量を始めた。器用な刀だ。膝丸はじんわりと胸に温かいものが広がった気がした。
「ところで甘いものと塩っけのあるものなら、どちらがいいんだ」
「きみが作るものなら何でもうまいが……今は塩っぱいものがいいかもしれぬな」
「わかった。先に源氏兄弟部屋に行ってるといい。すぐできる」
「了解した」
嗚呼それと。大包平は言った。
「俺だって誰にでも腕を振うわけではない」
じわ、胸がいっぱいになって、膝丸はくすりと笑った。
11/03 14:40